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 大崎善生 


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聖の青春





   
聖の青春




2016/11/23 読了






角川書店

内容(「BOOK」データベースより)
純粋さの塊のような生き方と、ありあまる将棋への情熱―重い腎臓病を抱えながら将棋界に入門、名人を目指し最高峰のリーグ「A級」での奮闘のさなか、29年の生涯を終えた天才棋士村山聖。名人への夢に手をかけ、果たせず倒れた“怪童”の歩んだ道を、師匠森信雄七段との師弟愛、羽生善治名人らライバルたちとの友情、そして一番近くから彼を支えた家族を通して描く、哀哭のノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞。




私は将棋とか囲碁とかチェスとか、苦手で。
五目並べも速攻で誰にでも負けちゃうくらいで。
そんな私でも、「3月のライオン」は楽しく読んでて。
その中の二階堂というキャラにはモデルになった棋士さんがいると聞いて、
どんな人だろう・・・とは思っていたんです。
この度、松山ケンイチ主演で映画化される「聖の青春」というものの
実在の人物が村山聖という人で、
その人が二階堂のモデルとなった人なんだ・・・くらいに想ってたんです。
でも、マツケンがどうしても演じたくて必死に太って命をかけて演じたと知り
どんな人生だったのか知りたくて、
楽天koboでもろもろ差し引いて150円くらいで買えたので
読んでみることにしました。

こんなにも壮絶に生きた人だったんですね。
幼いころから背負わされた病に苦しめられながらも
向き合い、戦いを挑み、それでも何とか共存して、
大好きな将棋を命がけで続けてきた一人の男性。
自分にとってあたりまえにあると思える時間も、
聖にとっては限りあるもの、愛おしいもので、
生きとし生けるものすべてに愛おしさを感じ、
小さな虫ですら殺せず、弱者のために出し惜しみしない、
言葉にすると陳腐になってしまうけど、
とてもとてもか弱くて強い人だったんだな・・・って思いました。

途中から涙なしには読めませんでした。
最後は嗚咽でした。
必死に生きてきた様が、目に見えるように描かれてるんです。
とくに、筆者の大崎さんが目の当たりにした、
師匠と弟子の愛おしすぎる一場面・・・
思い浮かべるとじんわりと涙が出てくるし、
こんな関係、観たことないって驚かされるし・・・

それだけの魅力のあった人だったんだろうなぁ・・・
私は村山さんの一つ年下です。
同じ時を生きていたんだな・・・って思うと、
この人の一分一秒を、私はダラダラと過ごしたな・・って思って、
ちょっと恥ずかしくなったりもしますが、
それはそれで愛おしい時間だ・・・って言ってくれる気がします。
いろいろと文句はつけられそうですが。(笑)

最後まで自分の病と向き合い、逃げることをしなかった聖さん。
逃げてもいいよ、頼ってもいいよ、休んでもいいよ・・って
何度も思いながら読み進めました。
ただ、休んだり止まったりするのが怖かったんだろうな・・・ってのも
十分に伝わってきてたから、
周りの人は心配やらヤキモキやらで、大変だっただろう・・って思います。
でも、それを全部吹き飛ばすくらいの、魅力的な人だったんだ・・
ご存命の時を、ちゃんと見ていればよかったな・・
そんな風に思いました・・。

聖さんの愛おしい時間を、克明に綴った周りの人たち。
こうして残って、描かれて、演じられて・・・
天国の聖さんはどう思ってるかな・・・?
そんなん、やめてくれーや・・・って言ってるかなぁ・・?
ぽそっ・・・とつぶやきながら照れる聖さんの姿が目に浮かぶようです。

筆者の大崎さんの、師匠の森さんの、ご家族の愛が
たくさん詰まった、一人の男性の一生を描いた作品、
オススメです。
ただし、人前では読むべからず。
絶対泣いちゃうから。(笑)