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 乃南アサ 


下記のリストは、既読の一覧です。リストの順番はランダムです。
他にもたくさん作品を読んでますが、レビューは・・・どうなりますやら。(汗)

それは秘密の 風紋 (上・下) 晩鐘 (上・下) ウツボカズラの夢
水曜日の凱歌





   
それは秘密の




2014/11/31 読了





心理描写の名人上手が、小説技法と男女観察の粋を尽くした、きらめく宝石のような小説たち! 罠と浮気。カネとライバル。煩悶と純心。明けない夜と、白茶けた朝。いつまでも瑞々しい老婆、フェティシズムに目覚めた小学生男子、結婚できないカップル、闇の中で胸をときめかせる政治家――。〈恋ごころ〉という厄介きわまるものを抱えた男たち女たちのミステリアスな心情と希望を描く、作者会心の珠玉短篇集。



乃南さんの作品は、これまでもたくさん読んでますが、
たぶん、ほとんど長編なんだよね・・・・
短編集って珍しいな・・・って思いつつ、手に取ってみました。

そんなに分厚くないのに、9篇も収録されています。
一篇が短いのか?と思ったら、そうではなくて、
40ページほどあるものが5篇と、3〜4ページのものが4篇。
ってことで、メリハリはありましたね。

個人的に、「僕が受験に成功したわけ」が気持ち悪くて・・・
でもさ、小学生でソレって、早くないっすか・・・?
娘の方を「棒みたい」って言ってたけど、
それこそ、その母の血を受け継いでいるのなら、
今後同じように成長していく可能性があるわけで、
そっちに期待しなさい!と言いたくなった。(笑)
引っ越してくれて、助かったよ・・・

好きだったのは、「アンバランス」かな?
あたしゃ、サプライズってあんまり好きじゃないのよ。
しかも、人生最大の買い物といってもいい、「家」を、
サプライズでもらっても、あたしゃ嬉しくない!!
悩んで迷って吟味して・・・
そこが楽しいんじゃん!勝手に決めないで!って言いたい!
ま、他人事なんで、楽しんで読みましたけど・・・
バッドエンドじゃなくて良かったわ・・・

最後の表題作「それは秘密の」も好きです。
タイトルの意味も、昭和の私には「なるほど!」ですし。(笑)
こんな事故にあったとき、一人じゃないってすごく心強いけど、
「つり橋効果」でしたっけ?
なんか、ドキドキを勘違いしちゃいそうなシチュエーションです・・・(笑)
ま、普通に出会ってたら、何の感情もわかないだろう二人の、
ひとときの出来事でした・・ってことで。
ドロドロ展開にならずにホッとしました!

今後も作品が出たら読んでいこうと思ってます。




 
   
風紋 (上・下)






2015/7/20 読了






双葉文庫

内容(「BOOK」データベースより)
あなたの近しい人が、ある日突然殺されたらどうするでしょうか。嘆き悲しみ、怒り憤るでしょうか。―高校生の真裕子は、母を殺された。犯人は逮捕されるが、苦しみは終わらない。現実を受け入れようとするのだが、それができない。必死に精神のバランスをとろうとする彼女の周囲には、重く張り詰めた空気だけがある。果たして真裕子は、安らぎを得ることができるのだろうか…。




20年以上前に書かれた作品。
私も20年以上前に読んだと思います。
今、なぜだか思いだして、読みたくなって、
古本屋で探して早速読んでみることにしました。

平凡な主婦の日常から始まる今作。
一転、この主婦が遺体となって発見されるわけですが・・・
人の命が消えていく様、
命の灯が消えた直後から、体の腐敗が始まっていく様・・・
もう、目に見えるような表現で、最初から苦しくなる・・

この作品は、犯人を捜すミステリーではない。
突然家族を失った被害者家族と、
突然家族が犯罪者となった加害者家族の目線、
そして、捜査する刑事、取材する記者の目線で、
判決が出るまで・・・・を描いています。

大好きな母が殺された・・・
その母を殺したのは、自分が通う高校の教師・・・
二人は不倫していた・・・と、かなりショックな展開。
被害者家族も、加害者家族も苦しんでいきます。

感情をぶつけられる人、
感情をどう表していいかわからない人、
見ていて本当に辛くなります。

取調べ、起訴、裁判・・・と話は進み、
被疑者本人の驚くべき供述へとつながっていって、
物語としても目が離せない展開に。

判決が出ても・・関係者の苦しみは終わらない。
20年以上経っても色あせない、普遍的なテーマ・・・
また時が経って、読みたくなるかもしれません。

このお話の続きは「晩鐘」という物語で描かれています。
もちろん古本屋で手に入れましたよ。
時間を見つけて読みたいと思ってます。




 
   
晩鐘 (上・下)






2015/7/30 読了






双葉文庫

内容(「BOOK」データベースより)
母親を殺害された高浜真裕子は、そのとき高校二年生。心に癒しがたい傷を負った。一方、加害者の子供たち大輔と絵里は長崎の祖父母のもとに預けられ、父と母を知らずに成長する。運命が変わったあの日から七年、かけがえのない人をもぎ取られた真裕子の心の傷は癒えるのか。殺人犯の父親を持った子供たちは、その運命を受け容れることができるのか。




「風紋」で描かれた時期から、7年後・・・
被害者の娘・真裕子は25歳。
加害者の息子・大輔は11歳。
「その後」を描いた、上下巻・約1400ページの大作です。

とてもとても、苦して重たい作品です。
最後の最後に、また哀しすぎる事件が起こります。
でも、それは、迎えるべくして迎えた悲劇のように思えた。

苦しくても、逃げずに、苦しんで立ち向かってきた人と、
苦しいから逃げて、大切な人から目を背けてしまった人、
それが二つの家族の未来を変えたと思います。

苦しい経験をして、そのことから目を背けて逃げたい気持ち、
わかる気がします。
時にはそれも必要かもしれない。
だけど、「我が事」だけなら、それでいいかもしれない。
人は一人ではない、
だからこそ、救われもするし、苦しみもする・・・
大切な人のため、立ち向かわなくてはいけなかったんだと思う。

苦しんで苦しんで、たくさん回り道をした彼女が、
きっと幸せになってくれると信じてる。
自分の苦しみだけに縛られていた時期から、
周囲の人との時間をちゃんと見つめられるようになったんだから・・・

そして、大きな「罪」を背負わされることになった幼い兄妹・・・
何も告げられず、だけど、自分たちの周囲の異変に囲まれて
生きていかなくてはいけなかった・・・
「隠すこと」は大事だったと思う。
だけど、隠すなら、その「隠し事」を覆い隠すほどの愛で
ちゃんと包んであげなくてはいけなかったんだ。
だれよりも幼かった「母」が一番罪深いと思った。

最後の悲劇。
その動機は、「逃げ」でもあり、「救い」でもあった。
そんな結論を、こんな幼い二人が、たった二人で出してしまったことが、
何よりも悲しかった。


罪を犯すということ。
人間は一人ではないということ。
結果、大切な人を、無関係の人を、長く長く苦しめるということ。
心に刻むべきことです。
現代、簡単に重い罪を犯す人が増えている。
自分の想いをぶつけたくなったとき、一歩立ち止まって考えてほしい。
あなたの罪は、あなただけに罰を与えるのではないということを。

このお話が描かれたのは2003年。
「風紋」もそうだけど、いつの時代に読まれても、
深く心に届く作品です。
とても分厚い作品ですが、ぜひ、読んでみてほしい一作です。





 
   
ウツボカズラの夢




2015/8/16 読了






双葉文庫

内容(「BOOK」データベースより)
高校を卒業した未芙由は上京し、親戚の鹿島田家で暮らすようになるが、家族がどうも変なのだ。顔を合わせることもなく、皆、てんでんばらばら。しかし、お互いを嫌悪しているわけではない。ではこの妙な違和感は何なのか?やがて未芙由はその正体に気付く。それは、彼らの平穏な日常を変容させるものだった。―「幸せ」を望むのは罪なのか。物語の最後に残るのは「崩壊」か「誕生」か。直木賞作家が描く、人間の欲と真実。




この手の話はたくさんありますよね・・・
最近も似たような話を読んだ気もするんだけど・・・(汗)

母を亡くし、父が速攻で再婚することになり、
居場所を失った主人公・未芙由。
母の従姉妹の家にお世話になることにする・・っていう話。

最初の段階で、この未芙由って子の図々しさっていうか、
いつしかその場に居つく習性みたいなのが
不気味さを醸し出しているんだけど、
完全にこの鹿島田家は未芙由に浸食された・・って感じ?

いや、べつに未芙由が何かを仕掛けたわけではない。
いや、仕掛けてはいるんだけど、
仕掛けられたとはだれも思ってないんだよね・・・
で、最終的に、居場所をみんな自分の意思で出て行って、
未芙由が乗っ取ってるっていう・・・

考えようによっては、いいキッカケだったのかもね、未芙由は、
鹿島田家のみんなにとって・・・。
面倒なものを押し付けた・・・って思ってるんだろうけど、
居場所を手に入れた未芙由にとっては、
そんなこと何でもないみたいだし・・・

ま、それぞれが「してやられた」って思ってないのなら・・・
いいか!(笑)

でもよ?父と息子・・・
真実を知る日が来ないとも限らないわけで・・・
完全なる安心な日々が訪れたとは、思えないんだけどね・・・(汗)




 
   
水曜日の凱歌




2015/10/3 読了






新潮社

内容(「BOOK」データベースより)
RAA(特殊慰安施設協会)―敗戦国日本は、進駐軍兵士からの性の防波堤として女たちを差し出すことに決めた。戦後裏面史にひっそりと残る彼女たちの孤絶・凄惨な戦いから、14歳の鈴子は、何を感じ、いかに生き延びていくのか?




戦後70年。
戦中生まれの父と、戦争直後に生まれた母の子として育った私。
まだまだ知らないことがたくさんあるんだと実感しました。
こんな機関があったなんて・・・

敗戦後、占領軍が来ることに対し、
日本婦女子の身の安全を守るため、
「身をていして米軍兵士の”相手”をする」という、
「防波堤」の役割をする女性を集めた施設があったのだそうな。

「RAA」=特殊慰安施設協会。
その種の仕事をしていた女性だけでなく、
何も知らずに集められた女性もいたようで、
一日に何人もの米軍兵士の相手をさせられていた・・・
精神を病んだり、自殺する女性も多く、
この施設を作ったからといって、
町中で起こる米軍兵士による強姦や暴行事件が
無くなることはなかったようだ・・・

この事実を、女性として知らなかったことが、何とも恥ずかしい
アメリカの機嫌を損なわないため、
臭いものには蓋と言わんばかりに、負の部分の報道は
あまりなされていなかったようで・・・


物語は、終戦時まだ幼かった主人公・鈴子が、
家族を次々と失い、母と二人で生きていく様が描かれています。
英語を嗜んだことがある母は、この施設で通訳として働くことになる。
鈴子はついていくことになるも、
現実をまざまざと見せつけられることになるわけです。

襲われないように、男子のような恰好をさせられたり、
安全のため、何度も引っ越しさせられたりはするものの、
母の仕事のおかげで、生きるという意味では苦労はしてない。
だけど、小さな女の子には厳しい現実だったよなぁ・・・(涙)

男に寄りかからないと生きられない母が、
いつしか強くなり・・・
いや、弱い部分を使うことを憶えた女になった・・・っていうか、
とにかく、ある意味逞しい女になっていきましたね。

鈴子はたくさんの女性に出会っていくわけですが、
物語は、RAA廃止されるところで終わっちゃいます。
だけど、まだまだ終わらないですよね、現実は。
性を生業にして生きる術を憶えてしまった女性の行く末や、
一人で生きていくために学問の道に進む鈴子のその後や、
米軍兵士と懇ろの母のその後、
出征した兄の消息、はぐれた妹の行方など、
気になることはたくさんあるけど・・・

この時代を経て・・・の今ということ。
いろいろと考えさせられています。
国の政策として、女性のみを防波堤にするなんて・・・
「だって、敗けたんだもん、仕方ない」ってあきらめられないよ・・・(涙)
男が決めた考えだよね、こういうのって・・・。
男が始めた戦争に、女は巻き込まてれ、後処理までさせられて・・・
もう、やるせないっすよ、本当に。

こういうことも含めて、戦争なんて絶対やっちゃいかん!って
つくづく思いました・・・。