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 柳広司 


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象は忘れない





   
象は忘れない




2016/3/28 読了






文藝春秋

内容(「BOOK」データベースより)
あの日あの場所で何が起きたのか(「道成寺」)、助けられたかもしれない命の声(「黒塚」)、原発事故によって崩れてゆく言葉の世界(「卒都婆小町」)など、エンターテインメントの枠を超え、研ぎ澄まされた筆致で描かれた五編。




「ジョーカー・ゲーム」などで有名な柳さん。
私にとってはお初の作家さんです。

このお話は、原発事故で人生が狂わされている人たちの物語。
私は東京在住であの震災を目の当たりにし、
原発事故に怯えた時間を過ごしました。
でも、間近で命の危険にさらされて、
いまなお故郷に戻れない人たちとは全然違う境遇であり、
いろんなお話を聞いたり小説を読んだりしてますが、
毎回、本当に悲惨な現状だということ、
そして、まだ終結していない事実を突きつけられます。
このお話も、いろいろと考えさせられました・・・。

あの日、あの水素爆発を目にして、
テレビから発せられる「まだそんなに大変な状況ではない」という
専門家の言葉を信じたくて、
でも、そんなはずないって思ってる自分もいて、
窓を閉め切って、通勤する夫の憂い、引きこもっていた時を、
じんわりと思いだして再び震えた・・・

あの場所で生きてきた人たちが、
原発を産業としてともに生きてきて、支えられていた事実もあり、
その原発に生活を奪われてしまったという苦しさも伝わってきました。
また、住所がちょっと違うだけで、
国や会社からの支援が変わってきちゃう現実。
仲間だったはずが、一枚の厚い見えない壁ができてしまう・・・
こんな風に、人間関係も崩していくんだ・・・。

また、漁師など生活基盤や生きがいを奪われた人たちの苦しみも、
痛いくらいに伝わってきましたね。
あの原発事故が終結したとしても、元の海に戻るまで
どれほどの時間がかかるのか・・・

地震、津波・・・
これは自然とともに生きる人間は避けられないこと。
だけど、この自然の脅威から命を守るべく、
工夫し対処していかねばならない。
だからこそ、原発事故での苦しみがあまりにも大きくて、
悔しくて悔しくてたまらない。
文中にも書いてあるけど、あの事故のあと、
全国の原発が止まっても国民の生活は何ら支障はなかった。
人間がコントロールできない原発なんて、
無くてもやっていけるんなら、いらないじゃん!って。
また、いつか日本のどこかで同じような巨大地震が起こるだろう。
そのとき、フクシマと同じ轍をまた踏むのか、この国は??
お願いだから、あんな苦しみは二度と経験したくない。
あれから5年が経ち、再びじっくりと思いだし考える時間を
この作品にいただきました。